機動戦艦ナデシコ
「あなたの一番になりたい」
私の名前は「ホシノ・ルリ」。11歳。少女です。 わけあって「機動戦艦ナデシコ」のオペレーターをやっています。 ところで、いま私はどんどん落ちていってます。 …といっても、ガケから足を踏み外したわけでも、ましてやビルの屋上から飛び降りたわけでもありません。 私は水の中を落ちているのです。沈んでいると言った方が正しいかもしれはせんね。 水の中ですが、私は息ができます。なぜと言われても困りますが…。 「オモイカネ? 水中で道具もなしに息ができる理由を推測。」
なるほど、これは夢だったのですね。それなら説明がつきます。 「こんな状況でナデシコのメインコンピュータである「オモイカネ」にアクセスするなんて…、夢とはいえ私もバカよね。」 話を戻しましょう。 上の方を見ると、水面に近いところできれいなお魚がたくさん、楽しそうに泳いでいます。 「あ…、あのみんなから追いかけられている黄色のお魚、アキトさんににてる。」 下の方は真っ暗な深海。私はその暗黒の世界へ向かって落ちているのです。 お魚の姿がどんどん小さくなってゆきます。 みず、ミズ、水…。 全てがいつわりだった幼い頃の思い出。 そんな私にとってたった一つの真実が「水の音」。 水は私の自我の象徴…。 深い水の底で、私もその一部になるのでしょうか。 体がしだいに透明になっていきます。 意識もうすれかけてきました。これが夢だとしたら、きっとレム睡眠からノンレム睡眠に移りつつあるのでしょう。
「思い出なんて、これからいっぱいつくればいいじゃないか!」 アキトさん…。 「ほぉら、ルリちゃんもみんなと一緒にたのしもぅよ!」 艦長…。 「ルリさん!」 「ルリちゃん!」 「ルリ君!」 「るりるり!」 みんな…。 いつの間にか、私の体をあのお魚たちが上に押し上げようとしていました。明るい水面がどんどん近づいてきます。あ、近づいてるのは私の方か…。 私は水面から顔を出しました。青い空、太陽の光がまぶしい世界です。 空には大きな白い船。私の帰るべき場所、待っていてくれる人々のいる所、それは…。 「ナデシコ…。」 私は目を覚ましました。
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