機動戦艦ナデシコ迷作劇場
『ルリルリ竹取物語』その3


「ねえねえ、ルリちゃーん。今晩は何が食べたい? フランス料理? 満干全席?」
「…ラーメン。」
「よし、今日は久しぶりに俺が腕によりをかけて作ってあげるよ。」
「アキトのラーメンって美味しいもんねー。」
「………。」

 ルリはだまってうなずきました。とても嬉しそうです。

 ルリも成長し、いまや16歳。淡い瑠璃色の髪は長く伸び、表情も昔に比べだいぶ豊かになりました。アキトとユリカの愛情に包まれ、ルリはとっても幸せだったのです。
 ただ、なぜか最近は夜空の月を見て物想いにふける事も多くなりました。

 この頃になると、ルリの美しさと聡明さは都にまで知れ渡るようになっていました。その噂は帝であるアカツキ・ナガレの耳にも届きます。
「ふーん。そんなに可愛い娘なら僕の7人目の側室にしてあげようじゃないか。僕自ら出向いて、ルリルリをGetだ!」
 さあたいへん。アカツキが大勢の家来を引き連れてルリの元へやって来ました。
かぐやルリルリ「という訳で彼女を連れてくけど、異存はないよね?」
「そんなぁ、ルリちゃんまだ16歳なんですよ!」
「いくら帝だからって横暴っスよ!」

 アキトとユリカは必死に抵抗します。
「僕は帝だよ。つまり僕の言うことは絶対命令なのさ。さあ、行こうかルリルリ。」
 アカツキはルリをむりやり連れて行こうとしました。ルリは何か言いたそうです。
「なんだいルリルリ?」
「私、ロン毛の悪者はきらいです…。」
ぐさっ!
 ルリの何気ない一言がアカツキにクリティカルのダメージを与えました。
「…まあいいさ。どうせ逆らえはしないんだ。夜になったら迎えに来るから、それまでに別 れを済ませておくんだね。」
 傷心のアカツキはそそくさと引き上げて行きます。

「アキトお父さん、ユリカお母さん、今まで育ててくれてありがとうございました。」
「何言ってんだ。あんな帝の所なんて行くことないよ。」
「アキトの言う通りよ。かわいいルリちゃんのためなら、ユリカ、帝にだって負けないんだから。」

 二人ともルリのために勝ち目のない抵抗をするつもりです。そんな二人の気持ちが、ルリには痛いほど嬉しいものでした。
「ありがとう…。でも、そうじゃないんです。実は今夜、迎えの船が来るんです。私はその船に乗って、新しい世界に旅立たなければなりません。」
「迎えって…、いったいどこから?」

 ルリはだまって指さします。指し示すその先にあるものは?
「天井?」
「お空?」
「もっとずっと遠く…。宇宙です!」

それから、それから…。


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