機動少女はいぱぁミリィ 第2話「ふたつの炎」その3
「私はミラージュ、帝国最強の戦士ファイヤー・ミラージュよ!」 唖然とするケイト、マリン、アリスの三人にむけて、その少女は言い放った。 三人が唖然とするのも無理はない。ミラージュの顔はルージュとほとんど同一だったのだ。違いといえば、冷静で無表情なルージュに対して高圧的で自信に満ちたミラージュという、表情から受ける印象だけだった。 「ルージュ姉さまにそっくり…。」 「ルージュですって? あーんな出来損ないの裏切り者とハイコンプリートモデルのこの私とを一緒にしないでほしいわね!」 その言葉にケイトは多少むっとした。逃亡したとはいえ、今でもケイトはルージュの事を、マリンやアリスと同様に自分の妹と同じように思っていた。 そしてなぜかマリンも不快を感じていた。ルージュはマリンが唯一認める永遠のライバル。本人は気づいてはいないが、そこにはひねくれた友情が存在していた。 アリスはケイトの後ろに隠れてオドオドしている。ミラージュを自分とは相容れない存在と感じているのだろうか? 「ファイヤー・ミラージュと言いましたわね。ずいぶんな自信ですこと。クィーンズ4はあなたが考えているほど甘くはなくてよ。」 「フフ…それはどうかしら。」 マリンとミラージュの間に激しい火花が散った。二人は同時に広場に走り出て間合いをとる。どうやら魔法での勝負になりそうだ。 「こら、仲間内での争いはやめなさい!」 平常心を取り戻したケイトが仲裁する。 「止めないで、新参者に大きな顔はさせませんわ!」 「ふふふ、死んでも知らないわよ。」 二人は呪文をとなえ始めた。呪文と言っても、精霊との長期契約を結んでいるので、契約遂行の印語と技の名前を発動スイッチとして唱えるだけだ。一瞬のタメがあり、魔法は同時に発動した。 「コールドウォーター・オブ・オールド!」 「ブレストファイヤー!」 マリンの周囲から発生した高密度の冷水流とミラージュの胸の前から放射された超熱光線が二人の中間でぶつかり合う。水と熱、この相反する存在が一ヶ所に集まった時に起こる現象は容易に想像できる。次の瞬間、爆音と共に水蒸気爆発が起こったのだ。 約100年の歴史を持つ美しい緑の庭園は跡形もなく消滅した。
INT帝国日報 No,113-096 昨日、宮廷の庭園が爆発と共に消滅するという事件が起こった。反政府主義者のテロかと思われたが、その後、単なる事故と判明。事故の原因は庭園地下のエネルギーパイプが老朽化し、漏れたエネルギーの自然発火によるものとの事。宮廷管理事務局は他にも老朽化した部分がある可能性を危惧し、後日、宮廷設備の総点検を行うもよう。 (中略) 本日、宮廷第三ホールにて、我らがクィーンズ4の新メンバー『ファイヤー・ミラージュ』様の着任式が行われた。ミラージュ様は昨年ご病気で亡くらられたルージュ様とほぼ同等のスペックとの事。(中略)なお、今回任務の都合で欠席されたマリン様に代わり、なんと皇帝陛下自らが出席された。陛下が国民の前に姿を見せられるのは一年ぶりであり、民衆の反応は(以下略)。
「ミ…ミラージュの奴、覚えてらっしゃい!」 宮廷病院のベッドの上で包帯ミイラ女と化したマリンは、上記のニュースを見てそう叫んだという。
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