機動少女はいぱぁミリィ 第1話「ナナシの島のミリィ・ルゥ」その2
「いざ、定期検診へ!」 というわけで、ミリィはアプリコットおばさんの家に向かって森の中を歩いていた。おばさんの家はこのナナシ島の中央、クタクタ山の山頂にあるのだ。 木々の緑の間からさわやかな青空がのぞいている。ハイキングをするならちょうど良い天気だ。しかし…。
ミリィは耳のセンサーアンテナをピコピコ動かした。しばらくして、角膜に装備された情報表示アイレンズに解析結果が表示される。 「おかしいわ。こんないい天気なのに動物の生体反応が全くない。それに一つだけ異常な数値を示しているこのエネルギーはなに?」 それは日常生活の中ではけしてあり得ない未知のエネルギーだった。 「あたし、以前にもこのエネルギーを感じたことがあるような気がする。いつだったかなー。あれはたしか…。」 ミリィの脳裏に突然、膨大なビジョンが浮かび上がった。漆黒の覇者に忠誠を誓う自分、アーマノイドの大群を指揮して戦う自分、仲間である三人のサイバーノイド少女たち。どれも今のミリィには全く記憶にないビジョンだった。そして邪悪な黒い影、血のように赤い一つ目…。 「あうっ。」 ミリィの頭に激痛がはしった。情報表示アイレンズにはタイプ11の爆弾マークが表示されている。 「の、脳が痛いー。」 ミリィは必死に脳内の補助コンピュータにソフトウェアリセットをかけようと意識したが反応がない。システムが完全にフリーズしているようだ。しかたなくバスケットに入れてあった携帯用裁縫ケースの中から待ち針をを取り出し、それを首の後ろの小さい穴に差し込んだ。 ぽぉーんっ! ミリィの頭の中で軽快な音が響く。その穴はハードウェアリセットスイッチだったのだ。しばらくするとシステムが復旧し、頭痛もおさまっていた。 「あーびっくりした。まさか非常用のリセットスイッチを使う事になるとは思わなかったわ。いったい何が起こったのかしら?」 リセット後のミリィは先ほどのビジョンを完全に忘れていた。 「!」 センサーが再び異常なエネルギー反応を感知した。しかも先ほどよりも数値が高い。近づいてきているのだろうか? 「わーん、どうしよう。」 センサーは既に方向と距離までも感知していた。 「右36度、距離20m…、15m…、10m…。」 草木が茂っていてよく見えないが、それは確実にミリィに迫りつつあった。 「8m、6、5、4、あっ!」 茂みの中から、ついにそれはミリィの前にその姿を現した。 「あうー…。」 ミリィは信じられないものを見た。
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