機動少女はいぱぁミリィ
「い…入れ歯?」 ミリィの前に現れたもの、それは空中に浮かぶ幅1mはある歯と歯ぐきだった。その表面は唾液のような透明の液体でギトギトに塗れている。一見すると大きな入れ歯のように見えるが、それは作り物ではなく生きているようだ。 「し…新種の二枚貝かしら…?」>/b>
がぢぃっ! 「わひゃっ!」 突然、歯が閉じられ、ミリィは慌てて後ろに飛び退いた。その場にとどまっていたら上半身を食いちぎられていただろう。 「ちょっと、あなた何するの!危ないじゃない!」 ミリィは(アメリア調で)指さして抗議をするが………しばしの沈黙が流れた。 GRRRRRRR! 「わーん!」 入れ歯モドキは(機界四天王ペンチノンのような)奇声をあげて襲いかかってきた。鋭い歯をガチガチ開閉させている。ミリィはドタバタと逃げ回るしかなかった。 「あぁっ、しまった!」 いつのまにか彼女は切り立ったガケの前に追いつめられていた。もう逃げ場はない。 「買ったばかりでもったいないけど…これを使うしかないわ。ううっ、15Gもしたのにぃー。あぁもったいない!」 ミリィがお菓子を入れたバスケットケースの中から取りだしたのは野球のボール大の紅い玉「魔宝玉」だった。この中には攻撃用のつくりおき魔法が封印されている。魔力の無い者でも、解呪の呪文をとなえるだけで使えるという護身用のアイテムだ。それにしても…。 「あぁ、もったいない!」 …今使わずにいつ使うのだ、ミリィ!? 「しょうがない、Release!」 さすがにあきらめ、ミリィは解呪の呪文と共に魔宝玉を入れ歯モドキに投げつけた。宝玉から吹き出した炎が入れ歯モドキを包む。普通の生き物なら骨を残して燃え尽きるほどの業火だ。 「15Gの恨み、思い知ったか!」 勝ち誇るミリィだったが…。 GRRRRRRR! 入れ歯モドキは無傷だった。しかも炎を口の中に吸い込んでいる。業火はどんどん小さくなっていき、ついには完全に消えてしまった。 「うそ…。」 驚愕するミリィ。彼女はあの魔宝玉以外に攻撃の術を持ってはいなかった。 …GRRRRRRR! 入れ歯モドキが異空間につながる口を開くと、そこには先ほど吸い込んだ炎が球状に渦巻いていた。 その火球がミリィに向かって放たれる。 「!」 先ほどとは逆に、今度はミリィが炎に包まれた。サイバーノイドとはいえ、普通の少女であるミリィにはこの業火に対抗する手段はない。 「私…死ぬのかしら?」 全身の感覚が麻痺した中、ミリィの意識は次第に失われていった…。
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