機動少女はいぱぁミリィ 第1話「ナナシの島のミリィ・ルゥ」その4
GRRRRRRR! 入れ歯モドキは歓喜の雄叫びをあげ、炎はますます燃えさかえる。こうして本編の主人公ミリィ・ルゥは第1話にして…。>/p> 「…勝手に殺すな。」>/b> 炎の中から声がする。ミリィの声だ! 炎は急速に四散していき、ミリィの姿が現れる。彼女は全くダメージを受けずに立っている。しかも服が燃えた様子さえないのだ。 GRR? 「この程度の炎、魔法障壁を強化するまでもない。」 声は確かにミリィ・ルゥのものだ。しかしその口調から感じられる印象は全くの別人だった。冷たい戦闘マシンのような…。 ミリィは再びセンサーで入れ歯モドキをサーチした。情報表示アイレンズに表示される情報を、彼女は正確に読みとっていく。 「なるほど、異世界からの転移が不完全で、動物の口の部分だけに憑依してしまった妖魔族。憑依魔獣とでもいうべきかしら、珍しい形態だわ。でもその様子ではベースとなった動物の本能に意識が取り込まれてしまったみたい。残念だったわね。」
入れ歯モドキが再び火球を吐き出した。しかし炎はミリィの体に届く前に魔法障壁に阻まれて消滅してしまう。形勢は逆転した。 「不完全な憑依魔獣とはいえ、非戦闘タイプの人々にとっては驚異。悪いけどおまえには消滅してもらう。ReConnect Engage!」 呪文と共に、ミリィの右手に輝く炎のプラズマ球が発生する。このような短い呪文で魔法を発動させることができるのは、精霊との長期契約を結んだ上級魔法使いだけだ。いったいミリィの正体は? 「あぅ!」 プラズマ球をかかげ、放つ寸前だったミリィが突然よろめいた。集めた炎のエネルギーが急激に減少していく。 「いけない、ミリィ・ルゥの意識が戻りかけている。今の彼女では憑依魔獣には対抗できない!」 不可解なセリフだ。今この体を動かしているのはミリィ本人ではないとでもいうのだろうか? 消えかかったプラズマ球を持ったまま、ミリィは人の手を離れたマリオネットのようにピクリとも動かなくなってしまった。そしてしばらくの間をおいて…。 「あちちちちちちっ! 熱いってばー!!」 手のひらの上で燃えさかる炎を振り払い、ミリィは復活した。火傷した手をふーふーしている。どうやらいつものミリィのようだ。しかし…。 「あぅー?」 GRRRRRRR! 現在の状況を把握していないミリィに、入れ歯モドキが襲いかかる。少女は鋭い牙に噛みちぎられ、鮮血の肉塊となってしまうのか!? 本編の主人公ミリィ・ルゥは第1話にして…。(またこのパターンかい?) 「ファイヤーボム!」 GRRRRRRN!? 高熱のプラズマ爆炎が入れ歯モドキを粉々に吹き飛ばす。 「ぎゃふっ!」 ついでにミリィも爆風で木の幹に叩き付けられた。おいおい…。 ぐったりと地面に倒れ伏したミリィの側に、何者かが近づいてきた。重量感のある足音、紫色の装甲、腹部に輝くエーテルリアクターエンジンの球体。 「戦闘モード解除、隠密モードに移行。目標ミリィ・ルゥを保護します。」 薄れゆく意識の中、ミリィは彼のそんなセリフを聞いたような気がした。 「あぅー………。」
つづく…
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